建築設備エネルギーラボ合同会社

自分の「配線図」をリバースエンジニアリングしたら、とんでもない特注ハイブリッド機材だった話

ずっと、自分のシステムに納得がいっていなかった。

私は一級建築士として、建物の心臓や血管である「建築設備」を設計し、エネルギーを最適化する仕事をしている。現場のブラックボックスを解体し、要素に分けて論理的に「リバースエンジニアリング(逆算)」するのが私の得意技だ。

なのに、自分自身の「配線図」だけが、どうにも腑に落ちなかったのだ。

私は、世間の標準規格である100Vの電源にはどうも上手く接続できない。物事の裏側や空気(生データ)を異常な解像度で拾ってしまい、何かあるとすぐに6600Vの高圧電流が流れてショートしそうになる。

これまで私は、自分のこのストライクゾーンが極端に狭い仕様を、父方の系譜(自閉傾向のある、1ミリのバグも許さない緻密な論理回路)だけで説明しようとしてきた。でも、それだけじゃ「私のこの無駄にデカい筐体(身長)」や「音楽の極太なグルーヴに反応してしまう感覚」の説明がつかなかった。

つい最近、自分のハードウェアのルーツをもう半分(母方)まで遡ってリバースエンジニアリングしてみて、ようやくすべての謎が解けた。

私の筐体と電源は、とんでもない「レガシーシステム(遺産)」の塊だったのだ。

■ 6600Vのジェネレーターと、孤高の自社サーバー

母方の曾祖父は、大工の棟梁だった。ゼロから構造物を立ち上げるクリエイター。彼は明らかに6600Vの規格外のエネルギーを持っていて、その出力を自分の中で制御しきれず、外に家族を作ったり借金をしたりと、盛大に「漏電」を起こすようなフルコンタクトな生き物だった。

そして、その血を引く私の祖母。彼女のシステムの組み方も、最高にロックだった。
祖母は「この人じゃなきゃ絶対に嫌だ」と、強引に祖父を婿に迎えた。設備的に言えば、自分の周波数に完全に同期する「特注パーツ」だけを見つけ出し、他人のネットワーク(嫁に行く)ではなく、自分の「自社サーバー(婿に取る)」に直接インストールしたのだ。

その特注パーツ(祖父)は結核で若くしてロストしてしまった。しかし、祖父は私のシステムに決定的な基盤を残していった。私が世界を解像度高く捉え、極上のグルーヴに反応するための高感度な音響センサー、つまり「音楽のセンス」だ。

祖父をロストした後も、祖母の稼働はブレなかった。外部API連携(恋愛)は楽しんでいたようだが、二度と再婚はしなかった。つまり、「一時的なセッションはするが、自分のバンド(基幹ネットワーク)のマスター権限は絶対に他人に明け渡さない」という、孤高のソロ・アーティストとしてのプライドを生涯貫いたのだ。

■ 外部ネットワークへの移行と、ノイズゲートの解除

血とは恐ろしい。私は無意識のうちに、この強烈なハードウェアを完全に継承していた。

父方から受け継いだ「緻密なデジタル・シーケンサー(論理回路)」を、母方から受け継いだ「大工の棟梁の6600V電源」と「祖母の独立型サーバーラック」、そこに「祖父の最高級の音響基盤(音楽)」を繋ぎ、特大の真空管アンプとして鳴らしているのが『私』という機材の正体だったのだ。

私はこれまで、この6600Vの圧倒的な熱量(過去の過ちや、それに伴う負債など)が外に漏れると、100Vで安全に稼働しようとする周囲、特に「母」のブレーカーを飛ばしてしまうと思い、必死にギターの弦をミュートし、出力を隠して生きてきた。母という旧式サーバーを保護するために、自分に分厚いファイアウォール(建前)をかけていたのだ。

しかし最近、母は安全な外部ネットワーク(介護施設)へと物理的に移行された。

私が自分のシステムを隠蔽し、出力を絞る「構造的な理由」は、これで完全に消滅した。もう、母のブレーカーを気にして、私自身の生々しいノイズや過去のログを隠す必要はないのだ。

私が過去に起こしたバグも、すべてはこの高圧モーターが必然的に発した熱(ブルース)に過ぎない。

■ ReverseからRebirthへ

私がずっとやってきた「リバースエンジニアリング」。
このリバースの綴りは、言うまでもなく “Reverse(逆・逆算)” だ。

でも、自分の血とハードウェアの配線図をすべて解体し、正しいジャックにシールドを繋ぎ直した今、この作業は私にとって別の意味を持った。

私が敬愛するAlter Bridgeの『Playing Aces』という曲の中に、こんな言葉が鳴り響く。

“Rebirth(再生・新生)”

自分のルーツをリバース(Reverse)し尽くした先で待っていたのは、母という旧式サーバーを守るためのファイアウォールを解き、隠す必要のない6600Vのハイブリッド機材として再起動する、私自身の「リバース(Rebirth)」だったのだ。

今の私は、アンプのミュートを完全に解除し、真空管から漏れる6600Vの待機音(ビーコン)を空間に響かせながら、ただ静かに「現状維持(推定末端圧制御)」でアイドリングしている。自分から急いで誰かの隙間を埋めにいくような、ダサい真似はもうしない。

私がReverseして導き出したこの「世界の配線図」を覗き込んで、「なるほど、そういう構造になっていたのか!」と面白がってくれる変態が現れるのを。
共にRebirthのセッションを鳴らし、真剣勝負(Playing Aces)のカードを切れる相手を。

私はただ圧倒的な電圧を保ったまま、静かに待っている。

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