家庭用のエアコンのカタログには『○畳用』という表記がありますが、これ、カタログにも書いてあるとおり「めやす」でしかないことをご存じでしょうか。6畳や8畳の部屋なら、この目安を使ってもそれほど問題になることはないでしょう。しかし、もっと広い部屋ではどうしているかと言うと、私たち設備屋が『熱負荷計算』とよばれる計算をして、必要な能力を検討しているのです。
冷房の季節を考えてみます。室内を26℃にしたいのだけど屋外は35℃もあるとすると、外の暑さが外壁から室内に伝わってくるのですが、外壁の性能によって熱の伝わり方が違います。「断熱性能が高い」というのはその壁が、熱の伝わりにくい壁である、ということで、熱の伝わり方を数値化して室内に伝わってくる熱の量を計算します。
ガラス窓の場合、先ほどの「伝わってくる熱」の他に、太陽の光が熱として室内に侵入してくることを考えなければなりません。冬は太陽の光があると暖かさになりますが、西日が射す部屋を冷房するときには、夏だけでなく秋も、日射の熱の量が大きくなることを忘れてはいけません。
室内を26℃にしたい時、冷房の場合は、その部屋に何人位の人がいるのかを想定することが必要です。なぜなら人間は、常に36℃をキープするために発熱しているからです。オフィスのパソコンやコピー機なども発熱しますし、照明器具も発熱しますので、これらの熱も計算に含めます。
室内を26℃で冷房したい時、屋外の空気、35℃もある熱くて湿度の高い空気が室内に侵入してくることも熱として計算します。ひとつは意図した換気。室内の汚れた空気を屋外のきれいな空気と入れ替えるのが換気ですが、機械換気であれば、この時に入ってくる空気の量がわかっているので熱の計算ができます。難しいのは、外から直接出入りできる店舗やオフィスのように、扉が開く度に外の空気が侵入してくる場所。この空気の量の想定が難しく、冷暖房が効かないことを心配し過ぎてオーバースペックになってしまうこともある。
建築設備に関わる計算や機種選定の難しいところは、計算で求められるからと言って、誰がやっても同じ数字になるわけではなく、想定の仕方で結果が変わってくるところ。何をどう想定するか、それを判断するには経験が必要で、そこが技術屋の腕の見せ所ではあるけれど、設備設計を志す人に伝えることが難しい所でもある。こういうところにAIを使うといいのでしょうね。