重低音と熱暴走の空間:おっさんの園の崩壊、AIの完璧な図面、そして「ハコ」すら不要な究極のDTM世界への妄想
自分の「配線図」をリバースエンジニアリングしたら、とんでもない特注ハイブリッド機材だった話
30代の頃、私は地方の30人規模の建築設計事務所で働いていた。意匠設計と構造設計がいる事務所で、当時、設備担当は私ひとり。もちろん全ての案件を一人でこなすわけではなく、外部の設備設計事務所に依頼する。そして「社内の設備担当」というポジションに集まるのは「外部には頼みにくい、厄介で割に合わない仕事」。私は膨大な図面に追われ、現場の定例会議に多大な時間を奪われる日々を送っていた。
激務の中で、私の中にひとつの「問い」が芽生え始めた。「この建物、完成したあと、本当にこの通りに使われるのか?」
設計事務所には、竣工後もクレームの電話が入る。「ここが使いにくい」「空調が効かない」。しかし、当時の私はそれが「真っ当なクレーム」なのか、「使い方が想定と違うだけ」なのかを判断できなかった。なぜなら、私は図面(空想)の中しか知らず、実際の「運用(現実)」を見たことがなかったからだ。
使い方もわからずに線を引く。それはまるで、一度も食べたことのない料理のレシピを書き続けているような虚しさだった。 「答え」が知りたい。自分が描いた線の「正解」は、建物の運用現場にあるはずだ。
その純粋な探究心から、私は設計事務所を辞め、建物の運用を担う「プロパティマネジメント(PM)」の世界へ転職した。もっと現場を知れば、もっと違う設備屋になれる。そう信じていた。
しかし、転職先で私を待っていたのは、「建物の正解」などではなかった。本来、利益相反の関係にあるはずの「仲介(リーシング)」部門のフロア。 私はそこの片隅に、たったひとりのPM担当として「間借り」させられたのだ。
周りはイケイケの仲介営業マンたち。その中心には、言葉で部下をコントロールしようとするパワハラ上司がいた。「PM? お前は俺たちの契約の邪魔さえしなければいいんだ」そんな無言の圧力が支配する空間。論理も、建築の正解も通用しない。あるのは「数字」と「恫喝」だけ。
私が求めていた「答え合わせ」の場は、最初から磁場が狂っている「歪んだ空間」だったのだ。そして、私の身体は正直に反応した。常に頭の中で震度1の地震が続いているような、細かく、止まらない微振動。
それは私のセンサーが発していた緊急アラートだったのだ。「ここは周波数が違う、早く逃げろ」と。 しかし、真面目すぎた当時の私は、その警告を無視して「仕事」を続けようとしていた。そして、あの大失敗が起きる。