建築設備エネルギーラボ合同会社

電気の「漏電」と「ショート」の違いが分からない? なら「硫酸の配管」で想像してみてください。

電気って目に見えないから怖いし、わかりにくいですよね。 私たち設備設計の仕事をしていても、空調や給排水(水や空気)はイメージしやすいのに、電気の話になると急に難しく感じる…という人は多いです。

「漏電(ろうでん)」と「ショート」。

どちらも危険ですが、「どう危険なのか」は全く違います。

今日は、電気をあえて「物理的な液体」に置き換えて解説します。 ただの水ではありません。触れたら終わりの「濃硫酸」だと想像してください。

私の描いたスケッチ、 建物の屋上に「高架水槽(こうかすいそう)」がある絵。

 水槽の中身: たっぷりの濃硫酸(=電気エネルギー)

 高さ: 電圧(高いほど圧力がある)

 配管: 電線

 末端の器具: 照明やモーター(電気を使う場所)

本来は、この危険な液体が配管の中を通って器具へ行き、仕事をして安全に戻ってくるはずです。しかし、ここで事故が起きます。

  1. 「漏電(ろうでん)」=配管のピンホール:2階
    配管の途中に、針でつついたような小さな穴(ピンホール)が開いてしまった状態です。

現象: 硫酸がポタポタと、床に漏れ出します。

なぜ怖い?: 派手な音はしません。でも、床には硫酸の水たまりができます。 そこに誰かが気づかずに足を突っ込んだら……大火傷(=感電)しますよね。 「地味だけど、人の命に関わる」のが漏電です。

この「ポタポタ漏れ」を見張っているのが、「漏電ブレーカー(ELB)」です。「あれ? 出した量と戻ってきた量が合わないぞ? 途中で漏れてるな!」と気づいて、バルブを閉めてくれます。

  1. 「ショート(短絡)」=配管外れのドボドボ流出:1階
    こちらはもっと暴力的です。 末端の器具がボコッと外れてしまったか、往って還る配管を太いパイプで直結(バイパス)してしまった状態です。

現象: 抵抗(邪魔するもの)がなくなるので、タンクの硫酸がドボドボと全速力で流れ出します。

なぜ怖い?: 凄まじい勢いで流れるので、摩擦熱で配管自体が溶けたり、最悪の場合は爆発したりします。 「火事や設備の破壊」につながるのがショートです。

この「ドボドボ流出」を見張っているのが、「安全ブレーカー(MCCB)」です。 「おい! 設計値の100倍もの量が流れてるぞ! このままだと配管が燃える!」と判断して、緊急遮断します。

まとめ:ブレーカーは「命のバルブ」


ELB(漏電ブレーカー): 漏れた毒液に人が触れないように守る。

MCCB(安全ブレーカー): 暴走したエネルギーで建物が燃えないように守る。

建物に届く電気は「交流(行ったり来たり)」するものですが、危険性をイメージするためにこうやって「恐ろしい液体の流れ」として捉えてみると、ブレーカーのありがたみが分かりますよね?

家のブレーカーが落ちた時「なんだよ、またかよ」と思ってすぐに上げる前に、「今、壁の裏で硫酸が漏れていたのかもしれない」と、一瞬想像してみてください。

それは、電気からの必死のSOSかもしれませんから。

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