建築設備エネルギーラボ合同会社

「予算オーバーだ、やり直せ」。 私が初めて徹夜をした日と、どんぶり勘定を捨てた理由。

私が初めて仕事で「徹夜」をした日の話。 まだ私が、サブコン(施工会社)から建築設計事務所に転職したばかりの頃のこと。

「予算」という概念の欠落

当時の私、図面の描き方や積算の方法は知っていて、小さな案件ならなんとか一人で設計ができるレベル。 転職先の設計事務所に設備設計の先輩はいない。私が唯一の設備担当。

ある小規模な官庁物件の実施設計でのこと。 私は教科書通り「エアコン+全熱交換器」の組み合わせで図面を描き、積算を仕上げた。当時は今ほど全熱交換器が標準的ではなかったけど、理想的なシステム。自信を持って提出した。

しかし、意匠設計担当者から返ってきた言葉は、予想外のものだった。「予算オーバーだ。減額しろ。」

私は呆然とした。「予算? そんなもの、いつ決まったんだ?」

設計事務所の流儀と、孤独な戦い

サブコン時代は「図面をどう納めるか」が仕事だったが、設計事務所の仕事は「予算(基本設計)の中でどう形にするか」から始まる。しかし、当時の私には「役所の予算取り」や「基本設計から実施設計への流れ」という知識が全くなかった。

教えてくれる上司も先輩もいない。 意匠設計者に「じゃあどうすれば?」と聞いても、「とにかく金額を下げて」と言われるだけ。

私はその夜、初めて徹夜をした。「全熱交換器」を全て消し、安価な「天井扇(換気扇)」に書き直す。 それに伴いダクト図も、積算内訳も、すべて一晩で作り直した。

トラウマから生まれた「独自の概算手法」

この痛い経験は、その後の私の仕事のスタイルを決定づけた。

「平米単価(坪単価)での概算はしない」

よく「事務所ビルなら〇〇円/㎡くらい」という予算の組み方をするが、当時の私にそんな経験値や統計値はない。 小規模な案件が多かったこともあるが、経験に頼ってまた「予算オーバー」と言われるのが怖かった。

だから私は、まだ基本設計や予算取りの段階であっても「概略の機器選定」まで行い、積み上げで概算を出すようになった。「この面積なら、この馬力の室外機が何台必要で、換気はこれで…」と、大まかでも機器を選定してしまえば、金額のブレは最小限になる。

教訓:設備設計は「金額」から逃げられない

あの徹夜の日は辛かったが、おかげで私は「意匠設計に予算を決めさせないこと」と、「根拠のある概算を出すスキル」を身につけた。

図面が描けるだけでは地方の設計事務所では戦えない。「いくらかかるか?」を常に意識し、自分の設計したシステムの金額に責任を持つこと。それができて初めて、意匠設計者とも対等に渡り合えるようになる。

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