2026年2月2日
私は、他人が作った複雑怪奇なExcelを「解読」するのが、実は嫌いじゃない。
一見、意味不明な数式の羅列。でも、セルを一つひとつ追っていくと、見えてくるのだ。「あ、この人、ここでこの数値を絶対守りたかったんだな」「ここでIF関数を使ったのは、過去に痛いミスをしたトラウマからかな」
面倒くさい作業だが、その裏にある「作った人の意図」や「何を大事にしたかったか」が解明できた瞬間、思わず「よっしゃ」と唸ってしまう。それは単なる計算チェックではない。数式に残された「思考の痕跡」へのプロファイリングだ。
私の本業である「建築設備のエネルギーマネジメント」も、実はこれと同じことをしている。
世間ではよく「ビルのドクター」なんて呼ばれるが、私はその肩書きにずっと違和感があった。医者は「今」を診て、悪いところを治して「お大事に」。でも私が向き合っているのは、もっとドロドロとした「文脈」だ。
新しい建物ならBEMSがあるかもしれないが、古い建物で、竣工時からの中央監視ログ(1時間データ)が完璧に残っていることなんて、まずない。でも、たった過去1年のデータであっても、深く潜れば「物語」が見えてくる。
「なぜ、この日の深夜にボイラーが動いたのか?」それは故障じゃない。「あの日、急に冷え込んだから、居住者を寒がらせまいとして、建物(管理者)が必死に回した」のかもしれない。
私は、そんな建物の「歴史」や「現場の苦悩」を、データという足跡からプロファイリングする。これは検査じゃない。「解読」だ。そして、オーナーにこう伝えるのだ。「これは無駄遣いをしてるんじゃありません。あなたのために、裏でこうやって身体を張っていたんですよ。」と。
建物の言葉を人間の言葉にする。だから私は医者じゃない。「建築設備の翻訳家」なのだ。