建築設備エネルギーラボ合同会社

直角のグリッド線をパージしろ。~絶対音感とゾーニングを手放した先の「シームレスな統合」~

人生で18回目の引越しをした。
これまでの私は仕事、家族の介護、そして自分自身の時間を分厚い壁(パーテーション)で厳格に「ゾーニング」することで生き延びてきた。異電圧が混触してショートしないよう、部屋を分け、物理的なブレーカーを落とすことで自分のシステムをギリギリで保ってきた15年間だった。

しかし今回、私はその分厚い壁をすべてぶち壊した。新しい拠点は広いLDK。そこで私は今、「ひとりの私」を統合するテスト稼働を終え、本稼働のスイッチを入れたところだ。

1.絶対音感という名の「X-Y座標(直角)」からの卒業

私は最近、50年間自分を守ってきた「絶対音感」というシステムをアンインストールした。

絶対音感とは、入ってくるすべての音を「ド・レ・ミ」という明確な点(グリッド)に強制変換する、極めてデジタルで直線的な定規だ。CADで引いたX-Y座標のように、すべてが直角(90度)で交わり、白黒がはっきりしている。過酷な状況を生き抜くために、私にはその「がっちがちの仕様書」が必要だった。

しかし、システム(肉体)は加齢とともに変化する。デジタルの定規と、現実の周波数にズレが生じている。さらに私が愛してやまないエレキギターという楽器は、チョーキングやビブラートで音を泥臭く揺らす「究極のアナログ(曲線)」だ。

だから私は、直角の定規を捨てた。音を点(デジタル)で捉えるのをやめ、波のうねり(アナログ波形)として直接受信するバイパス工事を行ったのだ。

2.斜めのアイランドキッチンが引き起こす「空間のグルーヴ」

定規を手放した私の新しいOSは、驚くべきハードウェア(住環境)を探し当てた。新しい部屋のアイランドキッチンは、壁に対して直角でも平行でもなく、絶妙に「斜め」に配置されているのだ。

昔の「設備設計者」としての私なら、こんな配置は許せなかっただろう。デッドスペースが生まれるし、「いったい何度傾いてる?」と気になってスケールをあて、CADで計測したはずだ。

でも今は違う。「45度じゃないな、60度か? まあ、何度でもいいか。意匠設計者、すげーな!」と笑って受け入れている。この「斜め」の配置が、空間に圧倒的な「動き」と「抜け感」を作っている。直角に縛られないそのレイアウトは、音楽で言えば、ジャストの拍からわずかに後ろにズレることで生まれる「タメ」――つまり、最高にソウルフルな「グルーヴ」そのものなのだ。

3.「明日死ぬかもしれない」からこその、統合の要塞

斜めのキッチンの奥には、私の仕事と音楽の司令塔、自作デスクトップとモニター3台からなる「コックピット」を鎮座させ、すぐ横にはアンプ。ギターは油煙から守るために収納に待機させてある。キッチンで朝ごはんを作りながら、私には十分な性能のモニタースピーカーから音を出し、それを解析し、シームレスにギターの出力へと直結させる。

仕事、生活、音楽。

かつてバラバラの部屋に隔離していた「私」が、いま壁のないひとつの空間で、完全に混ざり合って同期している。もう、仕事用のスイッチを別の部屋に探しに行く必要はない。常にすべてがスタンバイし、直結している。

「そんな広い空間に機材を並べて、ぜいたくな」と言うやつがいるかもしれない。笑わせるな。私は私のための法人の代表で、自分の人生の責任者だ。明日エラーが起きてシステムが停止する(死ぬ)かもしれないのに、自分の命と可能性を最高出力で回すための設備投資を、今やらなくていつやるんだ。

直角のグリッドを飛び出し、アナログの波形に乗って、私はこの統合された要塞から世に向けてロックな設備ショウを鳴らし続ける。

Stay Tuned.

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