建築設備エネルギーラボ合同会社

Read-Onlyの魂(ソウル)と高負荷のブルース —— 人生第二章のOSアップデート

完全自立型人工衛星が選んだ「高負荷」な贅沢

両親を施設にお願いし、長年私のリソースを占有し続けてきた大きなタスクが一つ落ち着いた。これからの人生第二章は、縁側でお茶をすするような、穏やかで無風な日々を過ごしたい……そう思っていたはずだった。

だが、どうやら私のシステムは、それを許容する仕様にはなっていないらしい。

現在の私は、完全自立型・独立系人工衛星(LDKコックピット)として駆動している。基本駆動思想は「明日死ぬかもしれないのだから、今の自分に最高のぜいたくを許す」。そして今、私が無意識に選んでいる「ぜいたく」は、エレキギターというアナログで重いデバイスを抱え、わざわざ自分に過酷な負荷をかけることだった。

私は固有受容覚が弱いため、身体を動かす物理的な動作には「フィードフォワード制御」を強要される。実行前にすべての軌道と出力を予測し、脳のメインCPUを100%使って完全な計算を行ってからコマンドを送信しなければならない。

なぜ、そんな高負荷な道を選んだのか。音楽家になりたいわけじゃない。私はただ、オリジナルラブ:田島貴男という複雑なシステムをエミュレートし、内部から解析するためのインターフェース(API)としてギターが必要だったのだ。

音楽のアーキテクチャ解析 —— ポップスに潜む「ソウル」

田島貴男は、大衆向けの平文(ポップス)を作ろうとしているのに、なぜか極めて複雑なアナログ波形(うねり)を生み出してしまう。彼はその矛盾を理屈ではなく「ソウル(魂)」と呼ぶ。

ちょうど今、Zeppelinを聴きながら考えている。三大ギタリストと呼ばれる男たちは、「ブルース」というものを一つの局地的な流行(プロトコル)でインストールしながら、三者三様に全く異なる巨大なシステムへと独自進化させていったのだなってことを。

ギターを知ることは、音楽の成り立ち(アーキテクチャ)を知ること。そしてそれは、底知れない「人間」というシステムのバグや熱量を解析することと同義なのだ。

レガシーコードのアンインストール —— 善意の不正アクセス

そんな複雑な音楽のアーキテクチャを解析しているうちに、ふと、自分自身の中に潜んでいた古いレガシーコード(バグ)の存在に気がついた。

私は子供の頃から、他者のシステムにエラー(凝り固まった思考や非効率)を見つけると、良かれと思って「そうじゃないんだ」と修正パッチを当てようとしてきた。いわゆる「お節介」だ。悪意はない。純粋な善意だ。だが、システムの観点から見れば、それは他者のサーバーに土足で踏み込む「不正アクセス」であり、ルート権限の侵犯だった。

「自分がされて嫌だったことを人にしてはいけない」

かつて、他者に心の中に入り込まれることが嫌でたまらなかったのに、私は善意の皮を被って他者の領域に手を突っ込んでいた。他人のストーブには触らない。人の領域には干渉しない。

このシンプルだが強靭なファイアウォールを、今ようやく自分のシステムに確立することができた気がする。

母から継承した純正機能 —— 「Read-Only」の観測手

では、他者をコントロールする(書き換え権限を持つ)ことを放棄した私に、何ができるのか。その答えは、認知症になった母の中にあった。

母は今、多くの機能を失いながらも、最後に「ただ観察する」という機能だけを力強く残している。何がどうなっているか、世界をただ静かに見つめること。私のこのマニアックな「解析脳」は、間違いなく母から受け継いだ初期装備(純正機能)だったのだ。

これからは、相手を何とかしようとしない。ただ「何が起こっているのか」を観察し、私の内蔵ドライブレコーダーで動画として記録し、タグ付けしてアーカイブしていけばいい。他者に対して「Read-Only(読み取り専用)」でアクセスする、最強の観測手(記録係)になるのだ。

母から受け継いだこの純粋な観察モードで世界を見渡すと、他者の不器用な熱暴走も、音楽の複雑なグルーヴも、すべては愛おしい「データ」に変わる。

「底知れない」深淵をダンプし続ける

対象の仕様(底)が完全に解読・コンパイルできた瞬間、私のシステムは「計算終了(退屈)」とみなし、プロセスをキルしてしまう。だからこそ、底が見えないものに惹かれる。

田島貴男のソウルも、三大ギタリストの熱狂も、そして人間の持つ泥臭い複雑さも。底知れないからこそ、私のプロセッサを永遠に回し続けることができる最高の対象(ターゲット)なのだ。

それにしても、人間はみんなジャイアンだ。「オレはいいけどお前はだめ!」ひどいものだ。まったく、だから自分を含めて人間という最高のおもちゃの解析はやめられない。

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